かわいそうだね?

著者 :
  • 文藝春秋 (2011年10月28日発売)
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東日本大震災をはさんで、「週刊文春」に連載された
『かわいそうだね?』…と、『文学界』に発表された小品、
『亜美ちゃんは美人』の2編。どちらも軽く読める作品…
でも…さすが綿矢りさタンだなァ~ ツボを押さえてる!

ま、どちらも痴話ごと…なんだけど、そんなこと云ったら、
小説なんて、どれもありふれたつまんないものに
なっちゃうだろう…要は、そうした話に、何が盛り込んで
あるかが肝心…まずは…地震のエピソードからはじまる…

幼い頃に阪神淡路大震災を経験したときのことを、
東京にいて思い出してる…そして、こんなふうに語る。

―困っている人はいても、かわいそうな人なんて
 一人もいない。

このフレーズは重い。小説の話をはなれ、あれこれと
思いを馳せさせられた…著者のことを、ボクは、
田辺聖子さんにつながるたいへんな才能だと思ってる。
今これを読み、次の一節は、心に刻んでおきたいと思った。

―私たち日本人が重んじる“和”は、実は深い親切心の
 もとで成り立っているのではない。人でなしとは思われない
 程度の親切と、身内以外の人に迷惑をかけるくらいなら
 切腹できるくらいの遠慮をもってして、かろうじて機能している
 繊細な絆だ。言わずに察する文化で支えあっている私たちは、
 そのルールを無視する人間に接すると、著しく憤慨して
 疎外する。憤慨は動揺の裏返し、疎外は怯えの裏返しだ。

このあと物語は…主人公がアメリカ人とディスカッションし、
行動する女へと変容する。まさに、徹底した議論、行動は、
カタルシスにつながる…とでも云っているようだ。どちらも、
おめでたくはないけれど、ストンと腑に落ちる話だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2014年1月18日
読了日 : 2014年1月18日
本棚登録日 : 2014年1月18日

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