経営者の方に愛読者が多いとのことだが、理由が分かった気がする。
ビジネスに例えるなら、日本という国家が近代の国際社会においてベンチャー企業であった頃の話だと思う。組織も制度も未成熟だが熱気があり、(ほんの数十年前まで数百年続いた階級があったにも関わらず、)出自・年齢を問わずに有能な人材を引き上げて、権限を与えて組織の命運を任せてしまう。日本という国家が生き残るには、他に道がなかったのだろうが、それで近代化をやり切ったことは感嘆の一言に尽きると思う。
本書の最も良かった点は、登場人物の魅力に尽きる。武士道精神を芯に持ちつつも、物事の企画・立案・判断については、科学者の様な合理性をもって行う人物が多く、非常に引き込まれた(特に合理性という点については、昭和の軍部と対比して、繰り返し強調されている)。
悪かった点をあげるとするなら、「余談だが、、」に代表される司馬遼太郎さんの本筋から逸れた話があまりに多いことだろう(それが、物語に厚みを与えているという見方も出来るので、ここは個人の好き嫌いによる)
戦争という題材が背景にあるが、決して、日清・日露戦争や当時の日本の軍部を礼賛している小説ではない。本書が描いているのは戦争の是非や善悪ではなく、激動の時代を生きた人々がどの様な思想でどの様に行動したかであり、彼らの活動を追っていく内に、8巻なんてあっという間に読了できる、そんな本だった。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2015年10月7日
- 読了日 : 2015年10月7日
- 本棚登録日 : 2015年10月7日
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