この小説で一番不思議だったのは、どう考えても姉弟の間にあるのはお互いへの恋愛感情なのを周りの人たち(姉弟の父親と姉の母親で弟の継母、姉の夫や娘、弟のふたりの妻)は気付いているのに、誰一人として声高に「それは良くないことだ」や「気持ち悪い」みたいに責め立てたりする人が居ないことでした。
言外に匂わせるみたいのは母親からしかなかった。姉の夫は義弟に嫉妬したり、弟の妻は「お姉さんには敵わないな」と弟と別れてしまったりする。でも罵倒されて方が寧ろ楽、みたいなのは弟の二人目の妻も言ってた。罵倒されたら、あぁもう赦されないんだな、と覚悟が出来るのに、、、
姉・美妙と弟・秋雨は自分の恋心を深い愛情へとじっくり熟成させ、安保闘争や2000年問題などが起こりつつ月日は流れ、たくさんの家族を喪いながら、年老いていく。
まもなく取り壊される事になった生家でふたりは最後の日を過ごす。
置いていく家族の象徴として「虫の声が着信音の携帯」があるのでしょうが、置いていくときの言葉が素敵。
静かなラストでした。ふたり一緒ならもう、なにも怖くない。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2022年12月2日
- 読了日 : 2022年12月2日
- 本棚登録日 : 2022年11月17日
みんなの感想をみる