この経済政策が民主主義を救う: 安倍政権に勝てる対案

著者 :
  • 大月書店 (2016年1月20日発売)
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感想 : 11
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 リベラル左派は稚拙なアベノミクス批判じゃなくて、ちゃんと経済政策を考えて、アベノミクスを超える経済政策を打ち出そうと主張してる本。松尾匡のネットでの活動や言説を知ってる人にはそれほど目新しい事は書いてないが、初めて知る人には、松尾匡経済学入門として最適な本だと思う。

 本書が提唱する経済政策は日銀と政府は協力し合って、政府が発行する国債を日銀が直接引き受けを行い、引き受けた分の資金を使って、政府は医療・福祉・教育に財政支出を行う「財政ファイナンス」をして、日銀はインフレターゲットを過熱した分のインフレ対策に使えという内容である。『不況は人災です』の時のインフレターゲット中心の政策を松尾匡.ver.1.0とし、Modern Monetary Theory (MMT)に接近してる現在の立場を松尾匡 ver.2.0とすると、本書はその中間の松尾匡.ver.1.5.と言ったところか そのあたりの松尾の経済政策の変遷を見られておもしろかった。

 松尾匡の提言にはほぼ賛成であるが、気になるところがあった。医療・福祉・教育に財政支出をしろというには賛成だが、それらは長期的な戦略であり、短期の景気対策としてはあまり向いてないのでは? 現在のデフレ傾向を克服するには産業構造を考えて、公共事業といったインフラ整備の方が乗数が高く、速効性が高いのではという疑問がある。そのところの乗数の議論が行なわれておらずに不満。多分よく言われる公共事業供給制約仮説を考えて、公共事業があまり効かないと考えてると思うけど、そこのところを書いておくべきだと思う。個人的にはインフラ整備にも財政支出しろが正解だと考えてるがどうなんでしょう?

 あと政策パンフレットとしての本として仕方ないかもしれないが、赤旗みたいな"ですます"調が鬱陶しいし、出てくる人物にすべてに"さん"付けしてるのはなんか気持ち悪い。その点はマイナスして個人的には10点満点中で7点、政策パンフレットとしては9点といったところである。

評点:7.5点/10点。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本経済
感想投稿日 : 2017年8月8日
読了日 : 2017年8月8日
本棚登録日 : 2017年8月8日

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