沈まぬ太陽〈3〉御巣鷹山篇 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2001年12月26日発売)
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以下、背表紙の文言。
ついに「その日」はおとずれた。航空史上最大のジャンボ機墜落事故 犠牲者520名
遺族係となった恩地が直面する想像を絶する悲劇

 今回の内容は読んでいて、すこしキツかった。損壊遺体の描写が多く、ホラー映画を見ている感じがした。
 墜落直後に捜索にあたる人達が目にする御巣鷹山に広がる、おびただしい数の損壊遺体の数々。はげしく死臭漂う現場。
 バラバラに成った遺体の一部を少しでも多く集めようと、たくさんの棺を開ける遺族。一度では気がすまず、何度も遺体収容所を訪れる遺族。
 堂本社長は遺族の家を訪ねるが、罵倒され、水をかけられたり、墓前で土下座をさせられたりする。
 1・2巻に出てくる堂本を見ていると「身から出た錆」だと思ったが、WiKiによると、堂本のモデルとなった高木養根さんは、個人の資格で遺族への慰問行脚をしたほか、毎夏群馬県上野村の御巣鷹の尾根に慰問登山を続けてる等、作中の人物とは大きく異なるようだ。
 また、恩地元のモデルとなった小倉寛太郎さんは、実際には遺族係はやっていない。
 相変わらず、身の保全しか考えない行天が出て来て、恩地に突っかかり、憎たらしい限りだが、行天のモデルはいないようだ。作者が考えた架空の人物のようだ。

 本巻はドキュメント形式のような構成をとっているが、あくまでフィクションの物語なので、事実とは大きく異なることもあるようだ。
 とはいえ、山崎豊子が綿密な取材をもとに、亡き遺族の無念の想いに、報いたい一心で綴った本書は忘れてはいけない警鈴の書だとおもう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 航空機事故
感想投稿日 : 2024年3月24日
読了日 : 2024年3月24日
本棚登録日 : 2024年3月17日

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