沈まぬ太陽〈4〉会長室篇(上) (新潮文庫)

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  • 新潮社 (2001年12月26日発売)
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本の背帯の文言
もう一度闘う決意をした恩地。企業を蝕む「闇の構図」を暴くことはできるのか

 利根川総理のたっての願いで、新会長に関西紡績の国見正之会長が国民航空の会長を兼務することになった。
恩地は国見会長に説得され、会長室の部長に抜擢される。

 新生国民航空の会長である国見が以下の新役人事を発表した。
 社長に、前の運輸事務次官で顧問の海野昇、副社長に、もと常務の三成道夫を指名した。
 はじめは国見の意見に同調していた社長、副社長も、やがて、厳格な国見から離れていく。

 今回も読んでいて非常に、むかむか来た。
 国民航空の関連会社である国航開発のワンマン社長の岩合宗助は、ゴルフ、夜のクラブ遊びに飽き、クルーザーを購入し、会社の接待や自分に必要な「客」だけを乗せ、オーナー気分を楽しんでいた。
 国民航空本社の秋月専務、甘粕秘書部長、新生労組が出資している旅行会社の専務の轟などをクルーザーに載せ、そこで密談をしていた。
 新生労組の幹部は、組合員が毎月払う会費(一ヶ月五千円、年間七億二千万)を使い、高級ホテルのスイートルームで酒を飲みながら定例会を行う。
 甘粕は国民航空の優待券・割引券を轟に横流しする。
 轟は裏地にドラゴンの地紋が入った派手なスーツを着、ブランド靴を履いている。新生労働組合の副委員長だった轟は、組合員時代に潤沢な組合費を使い高級レストランやバーで飲み食いし、女遊びをした。
 国民航空から吸った甘い汁で永田町の政治家に献金する、これら悪徳幹部達。

 魑魅魍魎が跋扈する国民航空の描写を読んでいると、こんな嘘のような事実が、現実にあったのだろうと思うと、むかむか来た。

 最後は御巣鷹山事故の一周忌の描写で終わるが、一周忌に参加した遺族の慟哭の様子を読んでいて涙が出るおもいだ。
以下、恩地の決意で終わる。
「今なお、航空会社の使命を忘れ、贖罪の意識の欠片もない社内の魑魅魍魎の輩を、はびこらせてはならない。
会長室に対する反駁は、さらに強まるだろうが、屈してはならないと、恩地は心に誓った」
 次巻「会長室篇・下」も楽しみだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 航空機事故
感想投稿日 : 2024年3月30日
読了日 : 2024年3月30日
本棚登録日 : 2024年3月30日

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