強い円は日本の国益

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  • 東洋経済新報社 (2008年9月4日発売)
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ー売るシステムから買うシステムへの転換ー
アジア等の新興国の成長や人口構造等の相対的な変化といった、世界経済の構造変化は、21世紀型の価格革命、すなわち資源価格の高等とハイテク商品のコモディティー化をもたらす。
その中で日本経済が生きていくためには、従来の労働集約的な輸出立国から、資本集約、更に技術集約的なブランド商法へと産業構造を転換していく必要がある。

榊原さんの主張は要約すると以上のようになる。

気になった点として、現状(2008年9月時点での「現状」だから、当然今現在とは全く異なる!)は円安バブルという主張はイマイチぴんと来なかった。
それは、主張の根拠に名目レートではなく実質実効為替レートを用いて「歴史的な円安」と言っているのだが、その部分の説明がほとんどなされていないために、(自分のような国際金融の初心者には)論旨、ロジックがつかみにくいからだ。

実質実効為替レートでは円安とのことだが、それが名目レートとなぜ乖離しているのか、その意味を説明して欲しかった。

本旨ではないが、読んでいて印象に残ったのは、日本独特の総合商社の強み。独自のファイナンス機能のもと、資源等を国際的に買うビジネスを展開するその姿は、榊原さんの主張する「買うシステム」の好例だ、と。海外の投資銀行が担っている機能を、日本では商社が展開している。
これは、黒木亮の『トップ・レフト』の劇的な結末のシーンを彷彿とさせるものだった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 経済・財政・金融
感想投稿日 : 2012年3月12日
読了日 : 2012年3月12日
本棚登録日 : 2012年3月12日

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