『神曲』である。『神曲』といえば『神曲』なのであって、傑作の誉れ高いということは、十代の頃から知っている。
で。岩波文庫である。上巻だけ買うと挫折しても「数百円だから、ま、いっか」となりやすく、それでは最初から挫折するために買うようなものだから、上中下巻をまとめ買いしたわけだ。奥付には1988年発行とあるから、小生22歳くらいである。そして予想どおり、上巻の十数ページで挫折すること数度。
その間、30年以上、古本屋行きの段ボール箱に入れては「ううむ。やっぱ、とっておこう。いずれ読めるかもしれないし」と、往生際悪く箱から取り出すということを何度やったことか。
で、今回。
数年前に逝った父の本棚に河出文庫版があったのを発見、パラパラめくって「こりゃ読めそうだ」と思って持ってきた。ちなみに親父は一度も開いていないらしく、ページをめくるとパリパリ音がする。アマゾンでポチったものの、おそらく読んでいないと思われる。さすがは親子である。
それはさておき、ようやく読めたよ、『神曲』(まだ地獄篇だけだけど)。
岩波版は原著の詩の雰囲気を文語体で表現しているため、現代人には難解だ(『南総里見八犬伝』を読了した自分でも、この訳はしんどい)。やはり翻訳の読みやすさは重要だ。河出版の奥付は2008年初版で、小生が読んだ文庫は2012年の発行。
岩波の場合、注は最後にまとめて掲載されているので行き来が面倒だが、河出は各歌が終わるごとに注が掲載されているので、たいへんわかりやすい。
それから、なんといってもギュスターヴ・ドレの挿画がたくさんん載っていること。これでだいぶイメージがしやすい。
さまざまな映画や小説はもちろん、『デビルマン』『進撃の巨人』などのコミックもインスパイアされていることがわかった(悪魔の描写など)のは僥倖である。アーティストの想像力を刺激するのが『神曲』なんだなぁ。
イタリア関係の知識がないのでまるでちんぷんかんぷんな話題もあるが、ギリシア神話の知識が少しあるのでそっちはよかった。
まるで歯が立たなかった岩波文庫だが、よい点が1つ。それは「地獄の図版」が巻末にあること。これは河出版を読みながらも役に立った。あと2冊、行けそうである。
- 感想投稿日 : 2023年3月25日
- 読了日 : 2023年3月25日
- 本棚登録日 : 2023年3月25日
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