<内容>
母語が思考を枠づける、とするサピア、ウォーフの言語決定論を実証的にしりぞけ、言語本能説の前提として、人は普遍的な心的言語で思考することをまず洞察する。さらに、文法のスーパールールが生得であること、その基本原理を幼児は母語に応用して言葉を獲得することを、最新の発達心理学等から確認する。チョムスキー理論をこえて、人がものを考え、言葉を習得し、話し、理解するとき、心の中で何が起きているかを解き明かす、アメリカで大きな反響をよんだベストセラー。
(BOOK」データベースより)
<感想>
発売当初から話題になった本ということもあり、洗練された議論の進め方だったり随処に至るトリビアルな知識が知的欲求を満たしてくれる。一方で、かなり噛み砕いて説明がなされているにも関わらず、テーマ上どうしても難しい部分があったり、使われている例文や表現も英語ベースのものばかりだったりするので、予備知識がない読者にとっては結構大変なんじゃないかな、と思ったりも。
いずれにせよ、初版からかなりの時間がたってはいるが、基本的な内容はそう色褪せてはおらず、普遍文法や言語能力についての概略的説明としても、疑似科学的な言語に対する通説をバッサリと斬ってくれる読み物としても、良書であると思う。ただし、普遍文法や言語の生得説があくまでも一理論であり、Michael Tomaselloのレビューに見られるような批判や違う方向からの研究もまた数多くあるということには留意しなければならない。そしてその辺の議論を追っていくのもまた、ホットなテーマを扱った本書を読む面白さではないかと思う。
- 感想投稿日 : 2011年6月10日
- 読了日 : 2011年6月5日
- 本棚登録日 : 2010年11月10日
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