父親の力 母親の力―「イエ」を出て「家」に帰る (講談社+α新書)

著者 :
  • 講談社 (2004年11月21日発売)
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家族の問題について各現場から河合隼雄に寄せられた質問に、自説を述べながら答えている。目新しいことはないけれど、わかりやすく納得しやすい内容。。
一貫して言われていることは「世の中、何でも自分の思い通りに行くわけではない」ということ。
だからこそ生きていく上で拠り所が必要で、それが今失われつつある宗教やイエが果たしていた役割。
日本社会の質・形の変化を悪者に、「昔は良かった」とするのではなく、変化に適応できていないのをどうにかすべき。

・長い個人主義の歴史をもつ欧米と、最近個人主義を大切にする風潮が出てきた日本。
個人主義が悪いという訳ではない、和を尊ぶことでうまくやってきた日本では強い「個人」を育てる仕組みが弱い。
→道徳規範が弱まって統制のとれない個人の暴走が増えている気がする。教会や儒教、神道(ご先祖様orおてんと様)の存在は躾の中にある。
 
・必要なものは簡単に手に入る、お金があれば大抵のことは外注できる、時間をかけなくても帳尻が合う便利な時代。
昔は母親のアカギレや夜なべ姿から親の愛情は自然に感じて育つことができたが、家族の有難味を感じる機会が減っているいる今は、子へ対話して伝える必要がある。でもうまくいかず形骸化しがち(Ex.「〇〇してやってるだろう!」)
才能がなくても気まぐれに語った子供の夢を応援する経済的余裕があるせいで、子供を宙ぶらりんにさせてしまう親の問題もある。
→月並みだけど、物よりも心を通わせるコミュニケーションが大事。

・昔の日本の父親は強かったというけれど、威張っていただけで父性としては弱かった。母親の役割を下請として父親がやるのも意味がない。父性とは「子供が自分を信じてやることに対しては、誰からも守ってやる」というもの。
→迷惑だから危険だからと何かとリスク回避型になっているのは、子供に対しての父性を日本全体が失いつつあるのかもしれない。

・「家族の絆」という言葉も昔は「家族に絆(ほだ)されて」という、束縛やしがらみなど悪い意味で使われていた。
今では家族の繋がりが薄くなりすぎて、あって当たり前の「絆」が大切なものと扱われるようになった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 家庭・家族
感想投稿日 : 2015年11月24日
読了日 : 2015年11月20日
本棚登録日 : 2015年11月20日

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