エイモス・チュツオーラ「やし酒飲み」(土屋哲訳)のすごさが圧倒的。やし酒飲みというキャラ付けをされている主人公が、亡くなった専属のやし酒造りを捜して旅に出てから戻ってくるまでの話なのだけれども(最後にちょっとおまけがあって、そこもまた面白い)、まるでリレー小説のように、次から次へと前のエピソードから次のエピソードへと妙な形でつながっていき、荒唐無稽な話がどんどん広がっていく。一体このままどこへ連れて行かれるのだろうと、わくわくしながら読んでいると、いつの間にやら主人公はやし酒造りと邂逅したうえに、ひゅうっと元いたところへと戻ってくる。その間、まるで狐につままれたようなとても楽しい読書時間を楽しめた。面白かった。
訳文もちょっと凝っているのだけれども、解説によると、元の英語文が「クレオル英語」で、いわゆる標準英語ではないらしい。英語の日本語に移すときの文体には、いろいろな観点からの取り入れ方があって、そのことについても解説で触れてあるけれども、物語る言葉として、とても楽しく読めたので、訳者の方の技ありだなぁと思った。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
翻訳小説
- 感想投稿日 : 2020年9月11日
- 読了日 : 2020年9月11日
- 本棚登録日 : 2020年9月11日
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