ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則

  • 日経BP社 (1995年9月26日発売)
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感想 : 645
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■感想
最高の本。以上。恐れ入りました。という内容。
僕なりのキーメッセージは「理屈を言わずに、やれ」ということだと思います。

■要諦
 本書の最重要項目
 本書が訴えるのは、基本理念を維持し、進歩を促す具体的な仕組みを整えることの大切さ。これが時計を作る考え方の真髄。↓がキーコンセプト。


 基本理念
基本理念=基本的価値観+目的
 基本的価値観:組織にとって不可欠で不変の主義。いくつかの一般的な指導原理からなり、文化や経営手法と混同してはならず、利益の追求や目先の事情のために曲げてはならない。
 目的:単なるカネ儲けを超えた社会の根本的な存在理由。地平線の上に永遠に輝き続ける道標となる星であり、ここの目標や事業戦略と混同してはならない。
 基本理念は熱心に支持されるので、ビジョナリーカンパニーには、カルトのような文化がある。カルトは言い換えると、支える仕組みのこと。ただし、個人崇拝のカルトであってはならない。
 市場環境が変化した場合でも変えることはない。

 2種類の進歩
 BHAG-Big Hairy Audacious Goals・・・具体的な目標
 BHAGは、「明確で説得力のある目標」で、ビジョナリーカンパニーは、進歩を促す強力な仕組みとして、時として大胆な目標を掲げる。
 BHAGは人々の意欲を引き出す。人々の心に訴え、心を動かす。具体的で、ワクワクさせられ、焦点が絞られている。誰でもすぐに理解でき、くどくど説明する必要はない。
 BHAGが有効なのは、それが達成されていない間だけである。企業がBHAGを達成して、別のBHAGを設定しなかった時、「目的達成症候群」にかかる。フォードが、自動車を大衆の手にという目標を達成した後、新たなBHAG設定しないうちに、フォードを追い抜くというBHAGを持ったGMに追い抜かれた。
 BHAGは社長個人の目標ではいけない。(チェースマンハッタンの例)
 進化による進歩を積極的に促している・・・抽象的な目標
 適者生存:繁殖し、変異し、強いものが生き残って弱いものが死に絶える(ダーウィン/進化論)
 進化の過程は、「枝分かれと剪定」に似ている。木が十分に枝分かれし(つまり、変異を起こし、)枯れた枝をうまく剪定すれば(つまり、淘汰の中で選択すれば)、変化を繰り返す環境の中でうまく成長していくのに適した健康な枝が十分に持つ木に進化してくだろう。
 環境に見事に適合したビジョナリーカンパニーは、主に賢明な洞察力と戦略的な計画の結果であると考えるよりも、主に以下の基本的な過程の結果だと考える方が、はるかに事実に合っていると思われる。つまり、多数の実験を行い、機会をうまく捉え、うまくいったもの(そして、基本理念に適合するもの)を残し、うまくいかなかったものを手直しするか捨てるという過程である。
→基本理念がとても大事。
 経営者がすべきこと
 試してみよう、なるべく早く
 誤りは必ずあることを認める
 小さな一歩を踏み出す
 社員に必要なだけの自由を与えよう
 重要なのは仕組みである。着実に刻む時計を作るべきだ
・・・3Mの15%ルール(勤務時間の15%を自分の時間に)、25%ルール(25%を過去5年間の新商品で上げるように)など。
 基本理念を維持し進歩を促す
 エクセレントカンパニー(トム・ピーターズ)との違い
 本書は、機軸(既知の事業)ではなく、基本理念から外れるな、と言っている点

 教訓1:時を告げる予言者になるな。時計を作る設計者になれ。
 「時を告げること」:素晴らしいアイデアを持っていたり、素晴らしいビジョンを持ったカリスマ的指導者。
 「時計を作ること」:一人の指導者の時代を遥かに超えて、いくつもの商品ライフサイクルを通じて繁栄し続ける会社を築く。ビジョナリーカンパニーの創業者は時を告げるタイプではなく、時計を作るタイプである。時を刻む時計を作るとは、会社を築くことであり。建築家のようなやる方で、組織を築くことに力を注いでいる。

 教訓2:ANDの才能を重視しよう
 ORの抑圧を跳ね除け、ANDの才能を生かす。
 ビジョナリーカンパニーは一見矛盾する考え方であっても、両方を手に入れる方法を身につける。これは、中間点のバランスをとるのではなくて、 両方100%獲得しようとする発想である。
 例えば、
利益を超えた目的 現実的な利益の追求
揺るぎない基本理念と力強い変化 前進
基本理念を核とする保守主義 リスクの大きい試みへの大胆な挑戦
明確なビジョンと方向性 臨機応変の模索と実験
社運をかけた大胆な目標 進化による進歩
基本理念に忠実な経営者の選択 変化を起こす経営者の選択
理念の管理 自主性の発揮
カルトに近い極めて同質的な文化 変化し、前進し、適応する能力
長期的な視野にたった投資 短期的な成果の要求
哲学的で、先見的で、未来志向 日常業務での基本の徹底
基本に忠実な組織 環境に適応する組織

 「一流の知性と言えるかどうかは、二つの相反する考え方を同時に受け入れながら、それぞれの機能を発揮させる能力があるかどうかで判断される」(F・スコット・フィッツジェラルド)、これこそ、ビジョナリーカンパニーが持っている能力。
 ビジョナリーカンパニーでは、基本理念を厳しく管理すると同時に、業務上、幅広い自主性を認めて、個々人の創意工夫を奨励している。ビジョナリーカンパニーは、カルトのような文化を持ちながら、比較対象企業に比べてはるかに権限分散が進み、業務上の自主性を幅広く認めている。

 教訓3:基本理念を維持し、進歩を促す
 BHAGだけでビジョナリーカンパニーができるわけではなく、BHAGを追求するにあたっては、基本理念を注意深く維持するべきである。
 例:ボーイング/信じがたいほどリスクが高いB747を開発するというBHAGの背景で、製品の安全性を最優先にするという基本理念を維持した。ディズニー/『白雪姫』『ディズニーランド』でいくら財政難に陥っても、細部にこだわるという基本理念は捨てなかった。


 教訓4:一貫性を追求しよう
 ビジョナリーカンパニーは経営理念を文書にしただけではダメ。
 ビジョナリーカンパニーの真髄は、基本理念と進歩への意欲を組織の隅々まで浸透させていることにある。目標、戦略、方針、過程、企業文化、経営陣の行動、オフィス・レイアウト、給与体系、会計システム、職務計画など、企業の動きの全てに浸透させていることにある。ビジョナリーカンパニーは一貫した職場環境を作り上げ、相互に矛盾がなく、相互に補強し合う大量のシグナルを送って、会社の理念と理想を誤解することはまずできないようにしている。
 ビジョン=基本理念+進歩のこと。ビジョンは、長期にわたって維持される基本理念と将来の理想に向けた進歩の組み合わせ。

 生え抜きの経営陣
 経営者の継続性をもたらす好循環
経営幹部育成(後継計画)→社内の有力な後継候補→社内の人材による優秀な経営陣の継続性→「基本理念の維持・進歩の刺激」→経営幹部育成・・・
 上記のような循環を経ないと、経営者の断絶が起こり、経営の空白、救世主探しが必要になる。結果として、「基本理念の維持・進歩の刺激」が失敗してしまう。
 ビジョナリーカンパニーの延べ1,700年の歴史の中で、社外の人材が最高経営責任者になった例は4回しかなかった。
 決して満足しない
 ビジョナリーカンパニーにとって最も大切な問いは、「明日どうすれば、今日よりもうまくやれるか?」である。このように問いかける仕組みを作って、毎日習慣にして考え、行動している。
 そのために、昔ながらの厳しい自制、猛烈な仕事、正体のための努力が必要で、近道はないということ。
 不安をもたらす仕組みを作り、自己満足に陥らないようにし、内部から変化と改善をもたらしつつ、基本理念を維持していくことができるか。
 将来の投資をしつつ、今の収益を上げる
 不景気にはどのように対処し、投資をし続けるか
 安心感が目的ではなく、ビジョナリーカンパニーは働きやすい職場ではない、ということを社員は理解しているか。楽な生活を最終目標にすることを拒否し、いつも明日には今日より前進するという終わりのない修練の過程を重視しているか。
 ビジョナリーカンパニーになるためには、①基本理念がなくてはならない。また、②進歩への意欲を常に維持しなければならない。そして、基本理念を維持し、進歩を促すように、③全ての様相に一貫性が取れた組織でなければならない。
 ビジョナリーカンパニー何から始めれば良いか?
基本理念を作ること。そして、基本理念は「探し出す」作業である。
 基本的な価値観を箇条書きにすること。
項目が5・6つを超えていれば、煮詰まっていない可能性あり。
 会社の目的、存在理由を文書にすべき。
今後100年間変わらないものである必要がある。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年5月24日
読了日 : 2020年5月24日
本棚登録日 : 2020年5月24日

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