冒頭「朝の冷え込みが強く残るまだ八時きっかり、鉄柱の天辺のスピーカーから割れた音でラジオ体操の音楽が流れだした。」
末尾「魂を抜かれたような顔のまま、砂場がこくこくとうなずいた。」
先週、たまたまネット検索で存在を知ったところに、古本屋で50円で売っていたため迷わず購入。
主人公はゼネコンに勤める現場事務所長。ホテル建設の現場を取り仕切っているところに、それまで青天井につけていた残業の上限規制が始まる。そして納期は延ばせない。
部下の病気、残業できないイクメン部下、使えない新人、近隣十人からのクレーム、理不尽な仕様変更、挙句の果てには左遷。
途中まで現場の苦労に共感しながら読み進め、最後ハッピーエンドで良かったんだけど、最後はあれよあれよという感じで、もうちょっとページ数をかけてもいいんじゃない?と思うほど。
建設業界のことは全然知らなかったけど、ゼネコンとサブコンの関係とか、今年家を建ててもらったけど、あの人たちもこういう感じだったのかなと思った。
自分たちの業界でも働き方改革が叫ばれるけど、ただ残業するなとか言われても正直戸惑ってしまう。本作での加藤の働き方(働かせ方)などを見ても思うことが多かった。仕事の質と効率のバランスは難しい。
単なる「お仕事小説」にとどまることのない、考えさせられる小説だった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
2022年
- 感想投稿日 : 2022年12月10日
- 読了日 : 2022年12月10日
- 本棚登録日 : 2022年12月8日
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