二分間の冒険 (偕成社文庫 3188)

著者 :
  • 偕成社 (1991年6月1日発売)
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本棚登録 : 1821
感想 : 159
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 これはどこか児童文学として反則なんじゃないかという気がしてしまうぐらい面白かったです。91年に書かれた本書は時代に依存する部分が一切ないファンタジーなので児童文学のスタンダードとしてこれからもいつまでも読みつがれていくことと思います。そして別世界で剣と竜が登場するファンタジーではありますが、いくつかの仕掛けによりまるで小学校が舞台のような雰囲気が全編を包んでいます。そのため、面白いことに違いはないのですが、ハリー・ポッターやナルニア国物語のようなファンタジー物語よりも、いかにも小学校の推薦図書にしたいような身近さが感じられます。本当に推薦したい推薦図書と言えます。
 この物語で扱っているテーマは時間であると言えるでしょう。「モモ」と違うのは特に「若さ」が扱われていることです。物語の中途で、若者たちが一般に持つ、老人や他の若者に対する根拠ない優越感や、選ばれた特別な存在としての自己意識が、登場人物たちに投影されて描かれます。しかしおそらくこの本を読む小学生たちは自分たちのことを述べられているとは気づかないでしょう。それが皮肉で面白いと、おじさんである僕は傍観者として思いました。
 子供たち(小3と小1)は竜との対決に息を呑んで興奮していました。自分だったらこんな謎をかける、こんな方法で竜に剣でいどむと想像が膨らんで、叱るまでなかなか寝ません。物語の意外な展開にも見事にやられ、そこが面白かったと言っていました。主人公の男の子とヒロインの女の子の間の、少し大人びたそれでいて小学生らしい距離感の恋愛感情(?)にも、身をよじって喜んでいました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年12月16日
読了日 : 2012年12月16日
本棚登録日 : 2012年12月16日

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