しろいろの街の、その骨の体温の (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版 (2015年7月7日発売)
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感想 : 414
4

R3.8.7 読了。

 小学校4年から中学校2年までの女の子から少女へと変化する時間が描かれている。女の子の世界は大変だなと改めて思わされた。伊吹君の優しさや素直さ、公平さに救われた。
学校のクラスという狭い空間がすべてだと思ってしまいがちな中学校時代。
 信子さんの自分の自尊心を守る戦いを目の当たりにし、結佳さんが事なかれ主義だった自身の中にも変化が起こった。誰に何を言われても周りの意見に流されず、自分で決めたり、答えを出したりすることを選択した結佳さんを尊敬する。
 最後は伊吹君と結ばれて良かった。
西加奈子さんの解説も良かった。
『コンビニ人間』も読んでみたい。

 個人的には森絵都さんの『カラフル』や川上未映子さんの『ヘブン』と村田沙耶香さんのこの『しろいろの街の、その骨の体温の』は、もう少し早く出会っていたかった作品です。

・「見返すなんてばかみたいだな、と私は思った。見返すということは、相手と同じ価値観を共有するということだ。ピラミッドの存在を肯定するということだ。」
・「おれにも、2種類に分かれて見えるかもしれない。自分からちゃんと楽しんでいる奴と、何もしない奴。(中略)でも、何もしないのに、つまんないって不満言ってる奴が、正しいっていうふうには思えない。」
・「私たちは、自分たちを、本当に、心の底から認めてあげられているのだろうか。社会という化け物が作った価値観から外れないように、私たちは自分たちの切実な想いを殺してしまっているのではないだろうか。私たちはもっと、自分を愛してあげることが出来るのではないか。自分の中に見つけたもの、それがたとえ醜さだったとしても、私たちはそれすら愛さなければならない。なぜなら、それを含めて大切な大切な私だからだ。この作品は力の限り、全身で叫んでいる。あなたはあなただ、と。まぎれもなくあなたなのだと。私は私の美しさを見つけよう。とても困難だが、必ずやってみせよう。(解説より)」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 作家名
感想投稿日 : 2021年8月7日
読了日 : 2021年8月7日
本棚登録日 : 2020年1月25日

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