愛人 ラマン (河出文庫 509B)

  • 河出書房新社 (1992年2月5日発売)
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感想 : 120

小説ではなく詩のような、
たゆたうようなうねるような、
この文章をそのまま飲み込んでいくことが、
この人の小説を読むということなのかな。

わかりにくいといえば確かにわかりにくいけれど、
イメージを直接注ぎ込まれるような
この書き方が私は好きです。

誰とどこにいても本心をみせない主人公に、
心惹かれるものの、理解や共感はしにくかったのですが、
船上で不意に訪れた裂け目のようなシーンに、
もしかしたらそういうことだったのかもしれないと
思いました。
そうだったのなら、幼くいびつな愛が切ない。

<引用>ーーそして彼女は突然、
自分があの男を愛していなかったということに
確信をもてなくなった、
――愛していたのだが彼女には見えなかった愛、
水が砂に吸いこまれて消えてしまうように、
その愛が物語の中に吸い込まれて消えていたからだ、
そしていまようやく、彼女はその愛を見出したのだった、
はるばると海を横切るように音楽の投げかけられた
この瞬間に。 (180ページ)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年8月8日
読了日 : -
本棚登録日 : 2017年10月22日

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