最近は特に目立った活躍を聞かない著者だが、かつて爆笑エッセイといえばこの本が真っ先に挙がるぐらい大人気を呈した本書。特に雑誌『ダ・ヴィンチ』創刊時はこの人を出せば部数が伸びると云わんばかりに(恐らく実際そうだったのだろう)頻繁に登場していた。
かく云う私も同雑誌上で連載されていた『おまえは世界の王様か?』を面白く読み、それがきっかけでこのような読書メモを残すようになったのだから、影響を受けているのは間違いない。
というわけで前口上が長くなったが、巷間で評判の高い本書をこの21世紀の世で読んでみた感想はどうにもあざといといった感じ。
エッセイはさらっと書いて笑わせるのが技法として素晴らしいと常々思っている私はやはり現在出せば売れる状態のエッセイスト、さくらももこ氏や佐藤雅彦氏のそれと比べると読者を笑わそう、笑わそうと良く云えばサービス旺盛な、悪く云えば無理のある文章がどうにも気持ち悪かった。特に前掲の二人のエッセイに共通するのは、日常の何気ない風景、誰もが経験する出来事についてそれぞれ独自の視点で疑問を提示し、新たな考え、物の見方を気付かせるという技術的に高度な内容を全く無理なく自然に書いている所が非常に素晴らしいのだが、原田氏のエッセイは自身の、百人中十人経験するかしないかの失敗談を面白おかしく書いているのが特徴で、これがもはや時代遅れの匂いを感じさせるのだ。
常々書いているように、本には読むに相応しい時期がある。このエッセイは高校の時に読むべきものだった。
多分もう私は原田氏のエッセイを買って読むことはあるまい。さらば原田宗典氏。
- 感想投稿日 : 2021年1月18日
- 読了日 : 2021年1月18日
- 本棚登録日 : 2021年1月18日
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