ハリー・ポッターと謎のプリンス ハリー・ポッターシリーズ第六巻 上下巻2冊セット (6)

  • 静山社
3.86
  • (1436)
  • (1052)
  • (1891)
  • (67)
  • (14)
本棚登録 : 10736
感想 : 920
3

全7巻で完結するこのシリーズ。その6巻目ということで、ストーリーも大きな佳境に差し掛かり、シリーズの大転回を迎えた。

先に書きたいことから書こう。
本作のサプライズは何といってもダンブルドアの死だろう。しかも常々自らの信念に基づいて信頼していたスネイプの手に寄ってその命が絶たれるという悲劇的な結末はこのシリーズでも名シーンの1つに挙げられるだろう。あのダンブルドアが懇願する、これが今でも胸に響いている。

しかし、この展開でスネイプというキャラクターが立ちまくったのも確か。謎のプリンスの正体が彼だったのも一助だろう。今までのスネイプはネチッこい復讐魔、かつてのいじめられっ子だったのが、死喰い人の恐るべきリーダーの地位まで上りつめた感がした。

しかし本作はシリーズにおいて大いなる変化をもたらしてはいるが、プロットに複雑さが無いのは残念。今までのシリーズでは知的好奇心を揺さぶられるミステリ趣向が凝らされていたが、今回はごく平板に語られているのではないか。

確かに冒頭のスラグホーンの教師勧誘の策略、ダンブルドアの出張と怪我の謎、トンクスの変わりよう、ヴォルデモートの秘密、スラグホーンから消された記憶を取り戻す方法など、知的ゲームのような趣向が無かったわけではないが、どれも小粒。死喰い人の手によるホグワーツ壊滅という結末に向かうストーリーの太い幹の細い枝葉でしかない。

実は今までダンブルドアという人物について私なりに憶測していた事がある。
それは真の悪は彼ではないかという事。
しかし本作でその目論見は脆くも崩れ去ってしまった。

そして今までシリーズに散りばめられてきたハリーの心の奥底に眠るどす黒い存在。これが最終巻でどのように明かされ、結末にどんな寄与をするのか。
私は今までのシリーズの設定をすべてひっくり返す驚きを期待しているのだが、ダンブルドアが善人として亡くなってしまった今、あまり期待はせぬ方がよいのだろう。

さて本巻でいよいよホグワーツは閉校の危機にさらされてしまった。最終巻では今までと違う展開で物語が語られるだろう。これは5巻において不死鳥騎士団が結成された際に私が予想した展開ではあるが、意外と遅かった思いはある。

ヴォルデモートの分霊箱の撲滅、スネイプとの闘い、ヴォルデモート卿との最後の対決、そしてマルフォイとの関係はどのようになるのか?
これら全てを果たして7巻だけで網羅できるのだろうかといういらぬ懸念がある。7巻は3分冊となるかもしれない。ようやくこの大ベストセラーのシリーズが次で終末を迎える。

一読者としてはシリーズを読み通したものだけが味わえる至福を提供してくれる事を期待して止まない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ファンタジー
感想投稿日 : 2022年7月27日
読了日 : 2022年7月27日
本棚登録日 : 2022年7月27日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする