春の庭

著者 :
  • 文藝春秋 (2014年7月28日発売)
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感想 : 253
5

最近は、その形がどのようなものであれ、この小説のような付かず離れずのご近所付き合いが珍しくなっている。だからこそ、同じアパートに住むこと以外何の接点もない人々が、ゆっくりとした流れで0から人間関係を作っていく過程がどこか羨ましいのかもしれない。

人が、家やそこに住む人に関心を向け、そこから広がる素朴で、個性的な登場人物たちのハタからみたら一封変わった人間関係が面白い。都会の住宅街の取り壊し間近のアパートで織りなされる素朴なやり取り。登場人物たちは、ひとりだが、孤独ではない。

全体的に、今住んでいる東京と昔住んでいた場所、豪邸と取り壊し直近のアパート、絵に描いたような家族と親を亡くしバツイチとなった主人公など、華やかさと陰のコントラストが際立つ。文章の端々に、共感できる表現もあり、読んでいてなぐさめになった。


最初数ページは文章から情景を思い描くのが難しく、少し我慢して読み続けたら、半分過ぎ、気づけば読了。2時間強。



メモ

先日の飲み過ぎとしゃべりすぎを反省したのか、顔を合わせると妙に愛想よく挨拶はするが、どこかよそよそしく、部屋を訪ねてくることも向こうから話しかけてくることもなかった 

子供が通う私立幼稚園で会う他のお母さんたちは教育熱心で仲間意識も強く、情報通の人が多いので、気がひける

男は多少腕白でもたくましく育って自分の好きな道を見つけるべきだ

願いが叶うまでは誰にも言わない、が信条で。

読書状況:いま読んでる 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2021年3月30日
本棚登録日 : 2021年3月30日

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