夜行観覧車 (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社 (2013年1月4日発売)
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本棚登録 : 17462
感想 : 1118
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2020(R2)8.30-9.1

久しぶりの湊かなえ。
「閑静な高級住宅街で起こった殺人事件を切り口にした家族の再生物語」と言えるだろうか。

湊かなえにしては、特有の「ドロドロ感」があまりなく、さらりと読んでいける。結末も穏やかで、湊かなえにしては「大ハッピーエンド」な印象。

Amazonの書評を見ると、家族の姿に胸糞悪くなる、とか、どこにも感情移入できない、とか目にしたが、僕はあんまりそういうことは思わず、むしろ、どこなでもありそうでけっこうリアルだなあと思った。

「家族」って、まさに「隣の芝生は青く見える」だけど、実情はいろいろあって、家族の数だけ苦しみがあり、家族の数だけ倖せのかたちがある。結局は、自分たちなりの倖せのかたちを追い求めていくしかない。うちもそうだなあ…。帰りたくないから職場でこれを書いてるけど、それではダメなんだよなあ…、と自己反省して閉じます。

どなたか、“夜行観覧車”の意味を教えてください。
あまりよく分かりませんでした……。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年9月1日
読了日 : 2020年9月1日
本棚登録日 : 2020年8月31日

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コメント 3件

さてさてさんのコメント
2020/09/02

theamaries1994 さん、はじめまして。

> どなたか、“夜行観覧車”の意味を教えてください。

私もこの作品を読んで意味が掴めず、自分のレビューでも触れずじまいでした。今回、theamaries1994さんのレビューを読んで、気になって眠れなくなり読み返してみました。

それで、私なりにこのように考えがまとまりました。
遊園地の中でも一番高いところから景色を見ることができ、かつ、ジェットコースターのようなスリルとも無縁で、何か夢心地な気分で乗るのが観覧車だと思います。街の高台の方にある高級住宅地、それを街の麓から見上げたとしても、その光景を観覧車に例えることは難しいと思います。でも、夜だったらどうでしょうか。遠近感のなくなる夜に見上げる高台の風景。作品の表紙のように輪郭が暗闇に溶け込んだ中に明かりだけがポツポツと見える風景。それを観覧車に重ねてみる。それぞれのゴンドラの中には、それぞれの人生があり、街から見上げるには、高いところに上り詰めて遠くを見ているであろう幸せな家族の情景が思い起こされます。でも実際にそのゴンドラの中は必ずしも穏やかな幸せに包まれているとは限りませんでした。そのゴンドラに乗っている人から見ても、結末の文章が語る通り一周してくると、そこは一周前とも異なる人たちがいて、同じようであって世界は少しづつ変わっていることに気づきます。でも、高台を見上げれば、そこには幸せな象徴として観覧車に例えられる幸せそうな明かりが灯っているのがみえる。そんな人の営みを湊さんは例えられたのかな、そんな風に感じました。
すみません、的外れだったらごめんなさい。

湊さんの作品、いいですよね。また、読んでいきたいと思っています。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

theamaries1994さんのコメント
2020/09/02

さてさてさん

的確な分析、ありがとうございました!
すごく納得しました。
そういえば、登場人物は、高台の高級住宅街への上り下りの時に自分の人生についてよく考えていますよね。
「美しく光り輝く観覧車に乗り、高いところから世間を見下ろす立場にいる(立場になった)はずなのに現実は…。」
観覧車はそれぞれ色が違います。家族も同様で、「光り輝き方(倖せのかたち)」はそれぞれですよね。そのあたりの光明が見えてよかったという読後感です。

さてさてさんのコメント
2020/09/02

theamaries1994さん、こんにちは
そうですよね。それで、面白いと思ったのはお書きいただいた色もそうですし、表紙のそれぞれのゴンドラに乗っている面々です。どこまでどういった打ち合わせもしくは、湊さんからの発注で表紙が出来上がるのかわかりませんが、もし綿密な打ち合わせですこうなっているとしたら、また違った見方もできるようにも思えました。
湊さんって、イヤミスのイメージが先行しますが凄惨な現場が出てくるわけでもなく、もっと人の深い部分を描いている方だと思います。少し世の中のイメージが違っているようで残念です。
まあ、お互い家族を大切にいたしましょう!

どうぞよろしくお願いいたします。

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