夏のホラー文庫祭。ずっと忘れていたが、『リング』は3部作ではなくもう1作あったのだ(という恐怖)。
山村貞子のDNAは、映像を通じて見た女性に処女受胎し、新たな生命を得る。一方で、同様にリングウイルスの遺伝子に耐性を持つタカヤマリュウジも世代を超えて生まれ変わる…。
前作のSF展開を反省するが如く、第2世代になるのか、貞子が生まれる部分については、ホラーでもなく怪談の体にもどろうとする。しかし、遠山とのエピソードがダラダラと続くうえ、遠山を殺す必然性のないまま集結。
また、後半では高山竜司の生まれ変わりとの子供を宿した女性が、「ループ界」において、貞子ウイルスを克服するさまを眺めるという点が斬新では有る。こちらは怪談ではなく、ちょっと中途半端なSFという風合い。
両作品とも、怪談のコアとなる「死の恐怖」の必然性がすべて前作以前に残されており、本作を読んでもピンとこないのが大きな減点対象で、その程度のエピソードであれば、前作の後ろにでもつければよかったのではないか。
リングの謎に気がついて失踪した高山はともかく、せっかく人知を超えた増殖能力を持った魅力的なキャラクターである貞子が、前作もではあったが、必然性のないオカルト・超能力の類に落とし込まれてしまったことで、本シリーズの魅力が大幅に失われてしまっている。
まあでも、やっぱり『リング』『らせん』の面白さは、『ループ』ですでに失われており、そこからのアウトストーリーに何かを求めること自体が無理なのであろう。
もう無いよね?
- 感想投稿日 : 2019年8月21日
- 読了日 : 2019年8月21日
- 本棚登録日 : 2019年8月21日
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