当り屋稼業を10年生業としている赤木圭一郎は、カモとなる地位の有る人間を標的にするため、怪しい会社の社長粕羽聖子に目をつけた。しかし、相手の粕羽も名うての当り屋であった…。
ふざけたタイトルに、表紙が蛭子能収の血まみれの漫画。冒頭には短いエッセイのようなものが納められていて、これはひょっとして、エッセイ集だったかな?なんて思いながら読み始めたら、ちゃんと小説であった。
初めの方は当り屋同士の化かし合いか?という内容なのだが、中盤を越えたあたりで話がこじれにこじれる。伝説の当り屋カスパー・ハウザーに、指紋がオオミズアオに持っていかれてしまった凧屋。そして、粕羽聖子の精神の中の世界へと飛ぶ。
聖書の描かれる王の母アタリヤから、なんやかんやと夢の世界のようなものが描かれ、その描かれ方もなんというか、薬でもやってんの?というハチャメチャでデタラメなトリップ感覚。筒井康隆の小説を思い出す。
想像世界の魔女裁判と、現実世界の裁判が交錯し、粕羽聖子の想像の中の息子たち(増える)はどうなってゆくのか。
ハチャメチャでドタバタというのは、頭のいい人が描かないと破綻するが、頭が良いのだろう。破綻と狂気と正常が行き来する、非常に危なっかしい展開で、多くの人は頭を抱えるに違いない。
とにかく、タイトルが内容をほとんど表しておらず、野田秀樹の戯曲だからわかりやすいに違いないと気軽に手を出すと、火傷以前に話に入れないこと請け合い。
怪作。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
実験小説
- 感想投稿日 : 2021年3月15日
- 読了日 : 2021年3月15日
- 本棚登録日 : 2021年3月15日
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