物語の最初から最後までずっと、ざわざわと心が落ち着かなかった。
外側から見れば何だかおかしいぞと思うことも、一歩内側に踏み込んでしまえば、たくさんの人が同じ方向を向いていることに安心し、何がおかしかったのか思い出すこともなくなってしまう。内側では、皆がまだ大丈夫だと根拠のない自信を持ち、勇ましくそして心地よい響きの言動に誘導され、その結果を都合よく自分勝手に解釈する。毎日流される膨大な情報のどれが正しく、どれが間違っているのか。わかったつもりでいることの危うさに気づかない。
考えろ考えろ。安藤兄が対決するべき魔物はいったい何だったのか。犬養か国家か。群衆となった人々か、それとも世間の空気か。どれにしても安藤兄が対峙する相手はあまりにも大きく、個人で太刀打ちできるものではない。それでも安藤は立ち向かう。
そして、弟潤也も兄とは異なる形でその何かに立ち向かおうとしている。けれど、大きな流れとなりはじめてるその何かに抗うには、ふたりはとてつもなくちっぽけな存在だろう。兄が大切にしていた「考える」ことだけでも、潤也が蓄えている「お金」だけでも世界を変えることは出来ないと思う。
「でたらめでもいいから、自分の考えを信じて、対決していけば世界が変わる」
流されるままに向かう先に望む世界はあるのだろうか。考えろ考えろ。覚悟はできているのか。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本文学:著者あ行
- 感想投稿日 : 2019年11月3日
- 読了日 : 2019年11月3日
- 本棚登録日 : 2019年11月3日
みんなの感想をみる
コメント 2件
やまさんのコメント
2019/11/09
地球っこさんのコメント
2019/11/10