夢 (書物の王国)

著者 :
制作 : 東雅夫 
  • 国書刊行会 (1998年8月1日発売)
3.67
  • (3)
  • (10)
  • (11)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 100
感想 : 11
4

これは夢の話です。未来へ希望に燃えた夢の話ではありません。眠っているときにみる夢の話です。

面白い夢を見たとします。夢を見ているときはとても面白いのに、朝目覚めて他人に話してみると、なぜかそれは面白くなくなっています。何がそんなに可笑しかったのかちっとも訳が分かりません。そんなことはないでしょうか。わたしは度々そんな気まずい雰囲気に陥ってしまいます。話してる方がそうなのだから、他人の夢の話を聞いている方はもっとつまらないでしょう。まして目覚めときに覚えている夢はほんの稀で、夢は夢の世界に置き去りになっています。

それでも、悪夢は別物です。悪夢は時として目覚めたあとにも追いかけてきます。そして、繰り返し見ることもあります。わたしは幼い頃に見た悪夢を大人になった今もしっかりと覚えています。悪夢はひっそりと現実世界に種を蒔いているようです。ふとした綻びから芽を出し、思わぬ時に人を恐怖に陥れます。悪夢はなかなか忘れることが出来ません。昼間忙しくしていても、ふとした瞬間思い出してはどきっとしてしまいます。
そんな悪夢は他人が聞いても恐ろしいものです。聞けば他人の悪夢が今夜自分の夢に浸食してくるようで耳を塞ぎたくなります。それでも幼い頃にゾクゾクしながら聞いた怪談話のように、聞きたくないのに聞きたいような、そんな気持ちにさせてしまいます。

ここには、他人の悪夢があちこちに散らばっています。悪夢が活字になると訳の分からない不穏な文章になって益々幻想的な不気味さを醸し出します。こんな話ばかり読んでいては白昼夢に脅かされるのは時間の問題です。もちろん、悪夢の話ばかりが収録されているわけではないのですが、印象に残ったのはやっぱり・・・悪夢の話でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本文学:アンソロジー
感想投稿日 : 2017年11月28日
読了日 : 2017年11月28日
本棚登録日 : 2017年11月28日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする