この小説は社会派ミステリーの中でも、評価が高いと思う。
それはこの作品特有の問題として幾重にも伏線が張り巡らされ、回収されていく様は面白い。
物語は、カフェを営む主人公の妻が、中学1年生の少年三人にナイフ等で殺害された。被害者は、まだ生後間もない子どもに覆い被さるように亡くなっていたという。警察の現場検証に対して、主人公の桧山貴志が立ち合い、被害に遭う前に五百万円が通帳から引出されていることを知った。警察の捜査で、まもなく犯人は拘束された、といった内容です。
主人公の疑問が新たな疑問を産む。予想は出来たが最後までどう決着するのかは分からなかった。
少年犯罪の問題を扱った作品は多くあります。読了後、早速刑法41条を確認した。
『十四歳に満たない者の行為は、罰しない。』と書いている。刑法上の責任能力がないものとして扱われる。法に触れる行為を行った場合には「触法少年」と呼ばれ、少年法が適用され警察の捜査対象からはずされる。11歳~13歳が凶悪事件を犯した場合、少年院に送致することができる、と書いていた。
しかし、少年法六十条には『刑を終えた少年は、将来に向かって刑の言い渡しを受けなかったものとみなす』とある。少年の犯罪は『前歴』となっても『前科』にはならないということだろう。勿論厳罰は覚悟しなければならないが、死刑は有り得ない。国際法である「児童の権利に関する条約」37条によって禁止と定められており、日本はこれを批准しているため、国内法が改正されても死刑にはならない。
未成年者の犯罪についての詳細は、被害者の求めに対しても少年Aなのだ。少年法の改正については厳罰派と擁護派が存在する。
せめて被害者の家族は、何故という疑問が残らない制度にしてもらいたい。たとえ少年Aであっても、恨みの連鎖は防げないと思う。
今回の読書は考えることが多かった。
それでも読書は楽しい。
- 感想投稿日 : 2021年7月6日
- 読了日 : 2021年7月4日
- 本棚登録日 : 2021年3月29日
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