歎異抄 (講談社学術文庫)

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  • 講談社 (2000年9月8日発売)
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感想 : 23
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「ひたすら一心に念仏を唱えていれば誰でも救われるよ」と言われてそのまま素直に受け取る人はいない。日本人は親鸞の時代からそうだったようで、親鸞の教えは誤解され濫用された。その状況を憂えた弟子の唯円が親鸞の死後に著したのが『歎異抄』(と言われている)。

親鸞は、不完全な人間の理性や道徳を捨て、すべてを超越した阿弥陀仏の誓願(生きとし生けるものを救おうとする意志)にただただすがれと説いた。
西洋哲学の合理論的潮流を否定しさったニーチェよりはるか昔、日本には親鸞がいた。そこで能動的ニヒリズムや超人を説くのではなく、他力本願という結論に至るのが日本的奥ゆかしさなのだろうか。

親鸞によれば、他力本願という信仰すら、阿弥陀仏の思し召しによって“させていただく”ものだという。そのように考えると、デカルトが哲学の出発点とした「思考する自我」の存在さえ、確かなものと言えるのか疑わしくなってくる。

西洋の近代哲学に先駆けて、昔の日本にも親鸞のような偉大な哲学者が存在したということは、日本人が誇るべ事実だろう。

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感想投稿日 : 2014年10月24日
読了日 : 2014年10月24日
本棚登録日 : 2014年9月27日

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