大した事件も起きず、三女・雪子の縁談→破談を淡々と繰り返していた上巻とは打って変わって、四女・妙子が主役となった中巻は、大水害被災に始まる妙子・奥畑・板倉の三角関係を中心にストーリーは緊張感を伴って展開。「事件」というべき出来事が数多く起こる。実際に発生した阪神大水害に取材した描写も生々しい。
他の作品に比べ、絢爛な文章や谷崎独特のフェチシズムよりも、ストーリー展開や繊細な心理描写に重きを置いているように感じた。
本作には多くの人物が登場するが、真の悪人は出てこない。それでいて複雑に交錯する各人の思惑・利害がストーリーに厚みを増している。
四姉妹(+女中のお春)それぞれの性格の違いが上巻よりもいっそう露わになっておもしろい!二女・幸子は谷崎の夫人がモデルだそう。谷崎も結婚する相手は意外と真っ当な常識人だったのね。幸子の「常識人ぶり」というか旧弊な考え方には多少イラつきを覚えたりもする。
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- 感想投稿日 : 2014年8月19日
- 読了日 : 2012年4月22日
- 本棚登録日 : 2012年5月19日
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