『夜の声』などで知られる英国の怪奇小説作家、W・H・ホジスンの海洋怪奇長編。作者の序文に『本書を以て三部作の掉尾とする』とあったので、第一部と第二部が刊行済みなのかと焦ったが、そちらは未刊だった(近刊予定にはある)。刊行順については巻末の解説で理由が述べられている。
本書は、遭難した船からたった1人救助された船員が、当該船の中でいったい何が起きていたのかを語る……という、英国の怪奇小説では伝統的な構成。
当初から不気味な噂のある船、何かを知っていそうな船員、主人公が目撃した『影』など、怪奇小説の王道を歩みながらも終盤にかけてはパニックホラー的な要素もあって楽しめた。
『動きの悪魔』の『鉄道』にしろ、本書の『船』にしろ、乗り物というのは基本的に閉鎖空間で、特に船は一度出港してしまえば更に密室度が高まる環境。ホラーと相性がいいのは当たり前と言えば当たり前。一見、密室ではないバイクにしても、全国各地に『首無しライダー』の噂があったりするしw ただ、こういった乗り物を舞台にした怪奇小説は、古典と呼ばれる作品の方が面白い気がする。Wi-Fiだって使える東海道新幹線に幽霊が出てもあまり怖くないしな……。
とにかく、第一部、第二部の刊行も楽しみ。早く出ないかな〜。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2015年7月28日
- 読了日 : 2015年7月28日
- 本棚登録日 : 2015年7月25日
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