何とはなしに魅力的なタイトルに出会い、本当に久しぶりに倉橋由美子を読みました。
そうか、漢字にすれば黄泉比良坂往還か。こちらの方が良く判る。
(「MARC」データベースより)
時空を越え、はるかな異郷とこの世を自在に往来する少年・慧君の幻想的な性的冒険。辛辣で精錬されたユーモアとエスプリ溢れる倉橋由美子待望の連作小説集。『サントリークォータリー』掲載
幻想的かつ耽美的な全15編。
腐敗した肉、抽象化したカニバリズム、近親相姦。
淫靡というか、直接的表現はあっさりしたものなのですが、シチュエーションがね。
そして同時に、浅学な私は全くついて行け無い漢詩・和歌・ギリシャ神話・能などをモチーフにした教養小説。
倉橋さんは何冊か読んでいるのですが、ずいぶん昔の話であまり記憶が無いのです。でも何となく「倉橋さんらしいな」と思わせる作品でした。
かなり読み手を選ぶ作品でしょうね。好きな人は好き、駄目な人は駄目。
私はと言えば、そこそこ楽しめました。
ちなみに以下は読了後に調べた各編のキーワードです。
・花の雪散る里;式子内親王(新三十六歌仙)
・果実の中の饗宴;月と六ペンス
・月の都に帰る;かぐや姫
・植物的悪魔の季節;王安石(北宋の政治家・詩人)
・鬼女の宴;高浜虚子(爛々と昼の星見え菌生え)「
・雪女恋慕行;アフロディテとエロス
・緑陰酔生夢;江馬細香(江戸時代の女性漢詩人、画家)
・冥界往還記;菅茶山(江戸時代後期の儒学者・漢詩人)
・落陽原に登る;麻姑(中国神話に登場する仙女)
・海市遊宴;蘇軾(中国北宋代の政治家、詩人、書家)
・髑髏小町;通小町(執心男物の能楽)
・雪洞桃源;ペルセポネ(ギリシア神話に登場する女神で冥界の女王)
・臨湖亭綺譚;白楽天の琵琶行
・明月幻記;不明
・芒が原逍遥記;黒塚(安達ヶ原の鬼婆を題材にした能)
- 感想投稿日 : 2018年8月22日
- 読了日 : 2018年8月22日
- 本棚登録日 : 2018年8月22日
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