金色機械

著者 :
  • 文藝春秋 (2013年10月9日発売)
4.02
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本棚登録 : 826
感想 : 155
4

非常に面白い物語です。

江戸時代のどこかの地方。宇宙船の故障により月に帰れなくなった人々。彼らが救助を待つため、住民と最小限の接触を保ちながら暮らす鬼御殿と、その長を支えるロボットの金色様。それとは無関係の、手で触れることで命を奪う能力を持つ家系。非常に変な設定であり、かつその理由や詳細は全く説明なし。ただ背景としてデンと据えてある感じです。伝奇物語。

こういうツッコミ所満載の設定は苦手な方なのですが、そうした奇妙さが気にならないくらい面白い。
小気味良い文章、登場人物たちの方向の違いはあれど前向きな個性、時間軸をばらした構成、サスペンスフルなストーリー展開など、色んな要素が交じっているのだろうけれど、とにかくページをめくる手が止まらなくなる。450頁ほどの分厚い本ですが、サクサク読めてしまいます。戦いのシーンも多くアクティブな話なのに、何をしてもどこか薄暗く、もの哀しい。このあたりが恒川さんの「味」ですね。

『夜市』や『風の古道』の印象が強く、恒川さん=ノスタルジック・ホラーという私の認識を変えたほう良さそうです。昨年読んだ『無貌の神』もそうでしたが優れた幻想譚の書き手と考えることにします。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ファンタジー
感想投稿日 : 2019年11月1日
読了日 : 2019年10月31日
本棚登録日 : 2019年11月1日

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