慶應経済の講義がベースとなっており、16世紀から現代までをアジア中心の観点から再解釈。新書らしくコンパクトによく整理されて全体的な流れが掴みやすくなっていながら、程よく詳しい説明もありそれなりの読み応えもある。この質量レベルなら大学の教科書としても使われるだろうし、入門書としては最適だろう。
本書によると19世紀までは世界経済の中心はアジアであり、それが産業革命により19~20世紀には欧米中心になったが、21世紀以降は再度アジアが中心になっているという。経済史のみならず政治史的な記述も結構あって近現代における政治と経済の密接な関連性もわかる内容になっている。
印象的なのはエピローグの「リベラリズムとナショナリズムの相剋(国境を超える経済と国境を越えられない政治)」について述べられた部分だが、著者はやはり経済学者だからなのかややグローバリズム志向で楽観的な印象を受ける。一旦は冷戦終結にはなったものの、昨今の中露の動向により民主主義的政治と自由主義的経済が必ずしも「普遍的」ではなくなっている点をどのように考えていくべきかが今後の課題であるように思えた。
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- 感想投稿日 : 2022年9月30日
- 読了日 : 2022年9月30日
- 本棚登録日 : 2022年9月29日
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