江戸時代前期の伊達騒動を描いた長編時代小説である。新潮文庫で上中下3巻になっている。NHK大河ドラマにもなった。
主人公は仙台藩家老の原田甲斐である。甲斐は伝統的には悪役・奸臣に位置付けられてきたが、本書では真っ当な人物として描かれる。逆に本書や大河ドラマの影響が強くて悪役イメージの方が少なくなっているかもしれない。但し、本書の甲斐には何を考えているか分からないところがある。そのために読者はじれったく感じることがある。
原田甲斐は「敵を欺くには味方から」を実践している。この原田甲斐の姿勢では味方を失っても仕方がない。甲斐としては自分が犠牲になればよいと覚悟し、多くの人を巻き込みたくないのかもしれない。柿崎六郎兵衛のような胡散臭い人物には容易に腹の内を空かさないことは当然である。
一方で昔ながらの人物も膝詰めで談判し、自分には腹の内を明かしてくれるだろうという内々の特権意識が感じられる。甲斐はビジョンの共有や透明性に欠けていて現代のリーダーとしては通用しないと感じたが、周囲もどっちもどっちと感じた。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2021年8月2日
- 読了日 : 2021年8月2日
- 本棚登録日 : 2021年8月2日
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