NHK 100分 de 名著 レイ・ブラッドベリ『華氏451度』 2021年6月 (NHK100分de名著)

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  • NHK出版 (2021年5月25日発売)
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感想 : 30
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本を書くことの大変さを指摘した文章がある。「その人間が、考えていることを書物にするまでには、おそらく一生を費やしたのじゃないかな。世界を見、人を見、一生を賭けて考え抜いたあげく、書物のかたちにしているのだ」。書物を消滅させてしまうことは重大な損失である。

本を否定する署長は「性と麻薬。機械的に反射作用をもたらすものにかぎる。テレビ・ドラマが愚策で、映画がつまらなく、演劇が気がぬけて、退屈してきたら、チクッと薬品を注射する」。書物の対極にある破滅的な快楽がドラッグになる。

警察はモンターグの代わりに無関係な別人をモンターグであるとして殺害する。面子のために冤罪を作る。日本の冤罪事件と共通する警察の体質である。

本を求める人々にとって希望が戦争になっている。戦争が体制を破壊しなければ救いが来ない。物語としては区切りをつけた終わり方であるが、現実味が乏しい。戦争で破壊されても、太平洋戦争後の日本のように官僚機構は生き残ることが多い。戦争で体制が滅びれば言論弾圧がなくなると期待できるだろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2023年4月27日
読了日 : 2023年4月27日
本棚登録日 : 2023年4月27日

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