十年ぶりに書庫から顔を出したコリン・ デクスターの「モース警部シリーズ」十数冊。その中から忘れている話を読み始めました。
いまではオックスフォードまでグーグルのストリートビューであっという間に飛んでいけますが、当時はイギリスの地図を指で追いながら小さなジェリコ街を探していました。隔世の感があります。
「あたしの住所はおわかりでしょう?」彼女はささやいた。
彼はうなずいた。「しかし、お名前を知りません」
「アンよ。アン・スコット」
彼は微笑みをうかべた、ほとんど幸福そうな笑顔だった。
「あなたのお名前は?」
「モースです」警官は言った。(大庭忠男訳)
翻訳がとてもいい名訳です。
モース警部シリーズのなかでも1,2をあらそう傑作です。本作でミステリー界の最高勲章シルヴァー・ダガー賞を受賞しています。シルヴァー・ダガー賞2回、ゴールド・ダガー賞は「オックスフォード運河殺人事件」で受賞していますがイギリス人でなければ分かりにくい作品です。
背後にギリシャ悲劇ソフォクレスの「オイディプス王」が隠れていたり、ラストのどんでん返しで読者にも全てが明瞭になるというミステリーの王道です。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
2013年5月
- 感想投稿日 : 2013年5月25日
- 読了日 : 2013年5月25日
- 本棚登録日 : 2013年5月25日
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