メディア・コントロール ―正義なき民主主義と国際社会 (集英社新書)

  • 集英社 (2003年4月17日発売)
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前から気になってた本の一つ。ノーム・チョムスキーさんです。
どこで僕はこの人を知ったのかよく覚えてないですけど、去年小論の授業かなんかでネタとしてあげられてた気がします。

民主主義には2つの概念があり、ひとつは一般的にとらえられている、一般市民が自分たちの考えを社会に反映でき、情報も開かれている社会。もう一方は一般市民に彼らの問題には決して関わらせてはならず、情報も限られた一部の人(特別階級)にしか管理されないといった社会である。
そして、現実は後者が優勢であり、この本ではそのことについて書かれています。

後者の民主主義には、2つの「機能」があり、ひとつは特別階級による実行を行う機能である。もうひとつは、一般市民が「とまどえる群れ」として、「観客」に徹するという役割だ。たまに選挙という方法で支持表明はするがそれ以外はまったく関与しない「観客」になることが機能だと言っている。
それを実行するために、組織的宣伝が有効に使われている。それによって「とまどえる群れ」たちに肝心なことから注意をそむけることが可能になる。彼らを決して参加者にしてはいけないのだ。また彼らはまったくそのことに気づかない。なによりすごいのが、これが自由の下で行われているということだ。財界という金も知識も労力もある相手ではこれができてしまうから恐ろしい。

そうした組織的宣伝に対する抵抗策として平和運動などが行われ、それは権力に懐疑を持ち、確実に見極める能力を獲得してきたという啓発された証だと筆者は述べている。

言論の統制もなく、情報も開示された時代であるにもかかわらずこうした情報の偏りが起こってしまう現実を訴えているチョムスキーさんはかっこいいです。彼は、どんなに批判されようが、脅迫状の一通を受け取ろうが気にならない、そんなものは現在抑圧されている国に比べればまったく比較にならないと言っています。自分の本が出版禁止になろうがそんな些細な抑圧では言論統制されてるとは言えないと。これくらいの覚悟がないと一国(しかもアメリカ!)の批判はしちゃいけないのかもしれませんね。

しかし、そんな彼の意見を東大出身のマイミクゆうくんが「ただの趣味だ」と一括し、ボコボコにしていたのがとても笑えましたw一度生で対面させてみたいです。

「とまどえる群れ」まっしぐらの僕に喝を入れてくれる本でした。「メディア・コントロール」は思った以上にサクッと読めましたが、二個目の「火星から来たジャーナリスト」は背景知識もないせいかいまいちつかめなかったです。またいつか読みなおしてみよう!
TVばっか見てる人!一度読んでみるといいかもしれません。

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感想投稿日 : 2008年3月4日
本棚登録日 : 2008年3月4日

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