正力松太郎と影武者たちの一世紀 巨怪伝 上 (文春文庫 さ 11-3)

著者 :
  • 文藝春秋 (2000年5月10日発売)
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感想 : 18
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「沢村忠に真空を飛ばせた男」の作者、細田昌志がBOOKSTAND.TVで大きく影響を受けた本として紹介していたので、読んでみました!なに?この情報量…なに?この展開…なに?この男、なに?この男たち…上巻だけも徹底的に翻弄されてしまいました。正力松太郎、名前は知っていても、虎ノ門事件の責任を取って警視庁を辞め、讀賣新聞に入り、、巨人軍をつくり、日本テレビをつくり、よみうりランドとつくり、日本に原子力を導入した、大正力と言われた男、というプロフィールも知っているつもり、でも、何も知らなかった人物の評伝です。個人の歴史というより、彼のまわりの群像の物語でもあり、さらには彼が生涯相対した大衆社会史でもあります。ルーツが米騒動の発火点、富山というのもきっと運命なのでしょう。日本に大正デモクラシーで大衆社会というようなものが生まれ、それを徹底的に抑圧した警察官僚時代、一転、それをメディアやスポーツで方向づけた新聞社経営時代、そのおぞましい陰と祭りのような陽が、なんの矛盾なく地続きである人生に恐ろしさを覚えました。大正力は、大いなる正力であると同時に、大正の力、大正力なのでもあると思いました。この本を読んで、今でも続く讀賣新聞の人生相談が、市民というより大衆を相手にしている気分が、なんとなくわかったような気がしました。正力松太郎の闇も怖いけど、その暗い深い穴をどんどん取材で埋めて行く佐野眞一も恐ろしいと思いました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年1月26日
読了日 : 2022年1月16日
本棚登録日 : 2021年9月11日

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