3種類の日本教 日本人が気づいていない自分の属性 (講談社+α新書)

著者 :
  • 講談社 (2008年4月18日発売)
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感想 : 14
3

宗教学者による日本論。
日本人をサラリーマン系、自営業・自由業系、
公務員・教員系の3属性に分類して、
さらに大学との対応関係にまで言及。

まぁなんというか、「文系的」であんまり根拠のない
話である。
特に、慶應はサラリーマン向き、早稲田は自由業、
東大は起業に向かない、とか、
思い込みにちょうどいいサンプルを拾ってきただけだと
思うような話も(笑)。
そこまで考えて高校生たちが受験しているのだろうか。

まぁでも、中にはもっともだな、ってことも書いてあって。
以下抜粋。

p.190
サラリーマン系として生きるということは、
企業という集団に対する適応力を高めるということでもある。
(略)
ところが、ここが難しいところだが、国際化、情報化が進む
現代の社会においては、世界を相手にした競争に打ち勝っていかなければ
ならず、その競争で勝者になるためには、たんに組織に対する
適応力を増し、順応性を高めても、それでは足りない。

p.212
労働条件の苛酷な小さな企業などでは、厳しい労働環境に耐え、
それでも頑張り通す人材を育成するために、意図的に忠誠心を高め、
企業の目的を自らのものとして内面化させるために、宗教団体の
研修会で使われる、自らを犠牲にしても組織に尽くさせる手法に似たものが
使われているようだ。

p.213
現代の社会では、広大な世界がつながり合っていて、個人は世界大に
広がったネットワークにからめとられている。その状況のなかで、
自立性を保つこと自体が難しい。

以上抜粋。

特に宗教に関する言及は、さすがに宗教学者、鋭い。
有りもしない神を信じ込ませ、そこに自己犠牲を強いるというのはまさに
宗教のなせる業であろう。
欧米などの一神教社会では、宗教そのものがビッグにその役割を果たしているから、
それに染まっている人にとっては、逆に仕事・企業というところでは
それを担えないとも考えられる(2つの神は持てないから!)

逆に無宗教である日本では、なにがしかを信じ込まされやすい人に、
企業理念だとかカリスマ経営者像だとかが宗教的位置づけで強烈に
降り注いできたら、なるほど、洗脳みたいなモンになりえるのかもしれないと思う。

まぁ、このへんについても本書では事実引用がされているわけでもなく、
私自身も明確な実例を知らないし、
結局のところ無根拠な推測の域を出ないのではあるけれど(笑)。


というわけで、まぁ「宗教と日本」というテーマを考えてみるときの
ひとつの材料としては面白い本だと思うけれど、
実際に悩んでいる人を救える本ではないと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本/都市と地方
感想投稿日 : 2012年1月12日
読了日 : 2012年1月11日
本棚登録日 : 2012年1月11日

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