文体練習

  • 朝日出版社 (1996年10月31日発売)
3.95
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本棚登録 : 1969
感想 : 208
5

読み始めたら、コレは、なんと言う本だ。
というより、本じゃない。
フランス語が原文なのに 日本語におしゃれに訳されている。
良くぞここまで訳したよ。
日本語の選び方がうまくて、おしゃれだ。

物語は
『ある日、バスのなかでソフト帽をかぶった26歳くらいの男が隣の乗客が押してくるので腹をたてるものの、その口調はたいした剣幕ではなくて、別の席があくとそそくさと座る。その2時間後、サン・ラザール駅前のローマ広場でその男をまた見かけた。連れの男がいて「君のコートにはもうひとつボタンがいるね」と言っているのが聞こえた。』

というだけなのであるが、
それが、様々な編集方法で繰り返される。

物語を 昆虫の目のように
たくさんの眼で みている。

小さな出来事が まるで宇宙のように膨張していく。

たえまない ひるまない しつこいほどに
くりかえしているが 繰り返していない。
遊んでいるけど 真顔でぶつかっている。

血のにじむような努力をして
いや 知のにじむような努力をして
書き連ねている。

ひとつの物語が 99の物語に 再現される。
あーぁ。

私は いままで 一つの物語しかかけなかったのだろう。
ひとつの物語が 99の物語に なる無限の可能性。

身体が ゾクゾクした。
読み終わったとき なかなかでなかった
大きなウンチが ドンとでたような快感さえ覚えた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 読書術/編集術
感想投稿日 : 2013年3月25日
読了日 : 2013年3月25日
本棚登録日 : 2013年3月25日

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コメント 1件

だいさんのコメント
2013/03/26

印刷の色分け、フォントの工夫もスリリングじゃないですか?

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