代謝建築論: か・かた・かたち

著者 :
  • 彰国社 (2008年3月1日発売)
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感想 : 15
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1969年に出版されて、2008年に復刻された本。
著名な本は、きちんと復刻されて、手に入ると嬉しい。
菊竹清訓が、1958年から1967年の約10年間にわたり、書いてきた文章をまとめたもの。
日本の高度経済成長期にあり、1964年には東京オリンピックがあった。
1970年には、大阪万博があり、その前までの時期に書かれている。
1958年は、ちょうど神武景気から岩戸景気と言われる時代である。
一方で、公害問題が起こり、技術進歩が、幸福にならないのではないか?
というような問いかけの中で、
菊竹清訓は、「設計とは何か」を真摯に向かい合っている。
随分と熱い想いが、その中に込められている。
デザイン(設計)とは何か?
設計の方法論を武谷三男の理論に基づいて展開していることに
その時代の背景が見えてくるような気もする。
1970年前後は、理科系学生として、武谷三男の本を読み
その方法論のロジカル性に、随分と影響を受けた時期があった。
「現象ー実体ー本質」という科学方法論で、物事や事象を見ることがあった。
そのようなことを思い出しながら、
菊竹清訓が、設計において、「か・かた・かたち」という方法論に応用したのは、
非常に面白く感じる。「か」が本質であり、ビジョンや思想。
「かた」が実体であり、法則や技術。「かたち」が現象であり、形態である。
なんとなく、ダジャレ的な言葉の選び方であるが、伝えようとすることは、
意味があるように思える。こんな風に考えるからこそ、メタボリズムという
取り換え可能な建築という提案にも発展したのかもしれない。
丹下健三は、「美しきもののみ機能的である」と述べ、
ルコルビジェの「機能的なものは美しい」という機能主義的建築観を批判した。
また、「伝統的建築」に対しても、否定的であり、日本的モダニズムを確立した。
そのため、この本には、「伝統について」「目に見えるものの秩序」
「目に見えないものの秩序」という章が構成されている。
ルイカーンの「空間は機能を啓示する」という意見を受けて
この本では、「空間は機能を捨てる」と言い切っている。

空間は機能を捨てるという言葉は、ある意味では、謎のような問いかけでもある。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 建築
感想投稿日 : 2020年4月23日
読了日 : 2020年4月23日
本棚登録日 : 2020年4月23日

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