本へのとびら――岩波少年文庫を語る (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店 (2011年10月21日発売)
3.82
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本棚登録 : 2010
感想 : 259
5

あの宮崎駿氏が岩波少年文庫からお薦めの50冊を選び、それぞれにメッセージを添えられています。自分の思い出に因ったものもあれば、とにかく読め!というもの、自分は読んでないもしくは読めなかったけどいいはずだというものまで。
挿絵についても言及されているのが、らしいなとも思ったり。E.H.シェパードがアニメーターになったらいいとか、「床下の小びとたち」の挿絵の印象など。様々な角度から岩波少年文庫を検証しまとめられています。
謂わば岩波少年文庫の宣伝媒体なのですが、それでも読み物として面白く読めるというのは宮崎駿という人物の面白さなのでしょう。
「児童文学はやり直しがきく話である」という言葉が印象的です。なるほどだから児童文学はつらく厳しい状況の物語でも、どこか希望を感じられるのですね。希望を感じさせる物語が児童文学だと思っていましたが、その希望の理由を知った思いです。
もちろん「やり直しのきかない話」での児童文学の名作もあります。それでも子どもたちには希望を与えたいと思うのが大人なのかもしれません。「この世には面白いことがいっぱいある」そのことを子どもに伝えるのが大人の役割だとずっと思ってきました。それを後押ししてくれるのが児童文学なのだと改めて心に沁みいったのです。
それは「3月11日のあとに」と題された最終章にも示されています。今児童文学を読んでいる子どもたちが新たな未来を築く。そのことをこんなにも力強く言えることが素敵だと思うのです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 在庫なし
感想投稿日 : 2018年3月8日
読了日 : 2018年3月8日
本棚登録日 : 2018年3月8日

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