中山可穂だから書けた宝塚。
性愛と自己愛の描写が強かった作家が、ここまで優しい作品を書けるなんて
という思いと
やはり現実に対するシビアな目はいまだ持ち合わせているのだ
という感慨とに揺さぶられました。
宝塚の役者さん、男役に立てた方、その舞台を支える色々な役割の方。
そして、昔事故で亡くなったトップスターの男役のファントム。
鮮烈で美しく短い世界での淡い恋愛。
宝塚は今まで一度も観たことがないのですが、特殊な旬の短い舞台に立つ人は確かにこういった悩みや葛藤を抱えているであろうと胸が締め付けられました。
最期の舞台後車に乗って去ってゆくシーンにはタナトスの背中が見えてしまう。
裏方の方々の物語への関わり方も、劇団をやっていた中山可穂ならではなのではないでしょうか。
このそこはかとなく香り立つエロティシズムと幻想的な恋愛にうっとりとします。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2017年11月27日
- 読了日 : 2017年11月27日
- 本棚登録日 : 2017年11月27日
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