「彼は僕という一神教の熱心な信者だ。」
ひきこもり系ホームズとお人好し系ワトソンのコンビがおくる、平和系連作短編ミステリー…かと思ったら、ちょっと趣きが違った三部作。
長い間、世間から隔絶された共依存にあった二人の関係性が、複数の他者との関わりの中で変化していく様と、語り手役の心理描写が気になってシリーズ一気読み。
外資系保険会社に勤める平凡な青年・坂木司。彼には、中学時代からの友人でひきこもりの鳥井真一がいる。
坂木は鳥井を少しでも外の世界と関わらせようと、外出に連れ出したり、自身が体験したささやかな出来事を話すうちに、いつしか、殺人とかではない、ちょっとした事件に遭遇するようになり、頭脳明晰な鳥井はそれを解決していくことになる。
それは、鳥井にさまざまな人との交流と、一過性では無い継続的な関係性をもたらし、それまで坂木しか存在しなかった世界を広げさせ、坂木を喜ばせていた。
けれどその反面、坂木は自分の心の中に巣食う感情の矛盾やエゴに気がついていて…。
「今にも鳥井は、手の届かないところへ、僕を置いて行ってしまいそうだから。」
シリーズが進む中で、鳥井がひきこもりになるに至ったさまざまな過去、「お人好しで平凡というか健康的」と誰もが思っている坂木の仄暗い内面などが、どんどん語られていく。その過程も、実は細かく散りばめられていた伏線が効いてて面白いのだけど。
さまざまな人との接触によって感化されていたのは、実は、鳥井よりも…。
これは、連作構成によりお馴染みになる脇役キャラの設定が絶妙に効いてて、唸ってしまいました。
三部作のラストは、なんだかんだで、しっかり後味がよく微笑ましいので、幅広い方にお勧めしたいと思った、お正月休暇にはまってしまったシリーズでした。(休暇直前に、三部作と知らずにたまたま一巻を手にした自分の運?嗅覚?を褒めたい!)
三部作一覧
青空の卵
仔羊の巣
動物園の鳥
- 感想投稿日 : 2022年1月7日
- 読了日 : 2022年1月7日
- 本棚登録日 : 2022年1月7日
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