「欲望」と資本主義-終りなき拡張の論理 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (1993年6月16日発売)
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感想 : 38
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資本主義と、それを動かす動力である「欲望」について論じた本です。

「市場経済」という観念とその基礎にある「自由」の観念は、個人主義や自由主義、デモクラシーといった西欧の価値観と深く結びついています。しかし、資本主義の中から現われ出た「産業主義」は、むしろ西欧の社会を支える骨格に対する挑戦とみなされると著者は言います。

著者は、ヨーロッパに資本主義が生まれた歴史的経緯について考察をおこない、ヨーロッパの外にある文明への「欲望」が、資本主義を動かしてきたと論じています。しかし、資本主義の「外」が容易には見いだせなくなり、さらに大衆の顕示的消費さえもが魅力を薄めつつある現在、人びとは改めて、資本主義によって覆い隠されてきた文化や知識、価値といったものに気づくことになるのではないかと論じて、資本主義の危機が新たな可能性にもつながっていると語られます。

資本主義と欲望をめぐる歴史的経緯についての解説は、興味深く読みました。ただ、著者が最後に語っている資本主義の「後」の可能性については、多くの問題があるようにも思います。直接「文化」や「価値」といったものについて語るとき、私たちはどのようにしてそれらを調停すればよいのか、まだ具体的な手段を持っていないように思われるからです。現在の社会制度に即した手続き的な正当化以上のものを求めることはよしたほうがいいような気がするのですが。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 政治・経済・社会
感想投稿日 : 2014年9月4日
読了日 : -
本棚登録日 : 2014年9月4日

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