短編三作品を収録しています。
「薔薇くい姫」は、いつも子どものようにあつかわれることに腹を立てている著者自身をえがいたエッセイに近いスタイルの作品です。
「枯葉の寝床」と「日曜日には僕は行かない」は、中島梓(栗本薫)以来によって評論の対象となった、現在「BL」、かつては「やおい」と呼ばれていた作品の源流と目されることのある男性同性愛小説です。
「枯葉の寝床」は、レオという美少年と38歳のギランの物語です。レオがオリヴィオという男によってマゾヒズムを呼び起こされ、そのことに嫉妬するギランは、レオとともに死ぬことをえらびます。「日曜日には僕は行かない」は、作家の杉村達吉とその弟子である青年の伊藤半朱(ハンス)の物語です。半朱は、婚約者を捨てて達吉をえらびますが、そのことが悲劇を呼び起こします。
ほんの一節を読んだだけで著者のものとわかる文体によって構築された耽美的な作品世界をつくりあげ、そのなかでキャラクター的な潤色がほどこされた登場人物の心理的な駆け引きが展開されています。同性愛という題材以上に、ケレン味の強い作品世界そのものが、読者によっては受けつけがたいと感じられるかもしれません。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本の小説・エッセイ
- 感想投稿日 : 2022年6月10日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2022年6月10日
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