ケータイを持ったサル: 「人間らしさ」の崩壊 (中公新書 1712)

著者 :
  • 中央公論新社 (2003年9月1日発売)
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高名なサル学の研究者が書いたトンデモ本との評を耳にして、興味本位で手に取りました。

著者は、現代の若者は人間らしさを捨ててサル化しつつある、と述べていますが、これは一種のレトリカルな表現だと理解しました(コジェーヴ=東浩紀の「動物化」だって、生物学的な意味での「動物」を意味しているわけではありませんし)。そのように受け取るならば、人間の社会的行動を、社会的な近接要因をすっとばして生物学的な要因に還元してしまうような議論ではないので、竹内久美子のような本式のトンデモ本といっしょにあつかうのは酷だという気がしました。だからといって、本書がおもしろいとは思いません。まあ、オヤジの愚痴のようなものでしょう。

たとえば、母子密着の「家(うち)のなか主義」が広がっていると述べている第2章で、サルどうしの毛づくろいの時間についてのデータと、子に対する経済的な投資額の多寡のデータを並べて議論をしていますが、この2つのデータからただちに現代人の「サル化」という結論を引き出すことの乱暴さを、この本の著者が承知していないというのは、少し信じがたいように思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 数学・科学・技術
感想投稿日 : 2020年10月27日
読了日 : -
本棚登録日 : 2020年10月27日

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