馬祖道一の語録に収録されている「禅問答」を紹介し、わかりやすい解説をおこなっている本です。
著者は、入矢義高が編集した『馬祖の語録』(禅文化研究所)を参照しており、「正直にいうと、この入矢本がなければ、そもそも馬祖の語録を読もうという気にもならなかったとおもう」と述べています。他方で、「あとがき」には「正直にいうと、わたしは「ヒンシュクを買ってやれ」という反抗期の子どものような気分でこの本を書いた」と語られており、テクストから禅機をつかみとろうとする著者自身の試みがそれぞれの解説で大胆に提示されており、おもしろく読むことができます。
禅問答ないし公案について、とくにそのなかに生きて働いている禅機をすくいとろうとする試みがなされている解説書としては、秋月龍珉の『一日一禅』(2003年、講談社学術文庫)があります。ただし、「禅道と禅学の二足の草鞋を履く」ことを標榜する秋月の本が、最終的には読者自身を禅の実践にみちびこうとする意図にもとづいて書かれているためでしょうか、たんなるテクストの「解釈」によっては到達できない境涯を示唆しているように感じられます。これに対して、あくまで「アマチュア」としての立場に立って書かれた本書は、テクストの「解釈」によって理解できることを読者に伝えるという立場に踏みとどまっており、読者としての立場ではすっきりと納得が得られるように感じられることが多かったように思います。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
宗教
- 感想投稿日 : 2021年4月9日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2021年4月9日
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