tsune105さんの感想・レビュー

新装版 蚤と爆弾 (文春文庫) (文春文庫 よ 1-52)

著者 : 吉村昭

• 文藝春秋 (2015年4月10日発売)

作家買いで、久しぶりに購読。
大東亜戦争と狂気の天才医学者の小説。

命を大切にするという常識的な道徳・倫理感よりも、資源のない日本のために、細菌兵器という科学技術開発に、心血を注いだ天才科学者の戦争参加を描いた作品。

敢えて匿名とした主人公の戦争小説という形態だが、人体実験を犯した731部隊を率いた石井四郎中将を、作者流の丁寧な取材に基づいたノンフィクションと言っても過言ではない。
以前、731部隊を描いた「悪魔の飽食」を読んだことがあるが、比較にならないぐらいに、それを越える史実に近づく優れたノンフィクション。

また、たった248ページで、太平洋戦争前夜から戦後までの社会状況を描ききり、本当名作です。
保坂正康の解説も秀逸。

感想投稿日 : 2015年7月4日

読了日 : 2015年7月4日

本棚登録日 : 2015年7月4日