語り女たち

著者 :
  • 新潮社 (2004年4月15日発売)
3.10
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本棚登録 : 234
感想 : 54
5

「美しい」という言葉を結晶にして閉じ込めたような
北村薫版、千夜一夜物語。

ミッドナイトブルーにふわりと浮かぶ羽根が印象的な表紙カバーを捲ると
ひと昔前の洋書のようなノスタルジックな表紙が現れ、

目次に一色だけ追加されたスプリンググリーンのインクが
見開き2頁のプロローグ部分を贅沢に彩って。。。

そして、何よりも、そのインクで綴られた
北村さんの日本語の、端整な美しさ!

空想癖のある主人公に17人の語り女達が語る摩訶不思議な物語、
その1篇1篇に添えられた幻想的なイラスト、
そしてエピローグ部分を彩るクリムゾンのインクも
とにかくどこをとっても美しい。

「笑顔」 「海の上のボサノヴァ」 「体」
「水虎」 「梅の木」の5作が、とりわけ素敵だった。

特に、子猫と暮らし始めて、
命あるもの同士の血肉の通った触れ合いの中に
自分の存在を喜びをもって自覚する「体」は、
北村さんの過去の作品『水に眠る』の中の「くらげ」の
歌でいうならアンサーソングのような作品だなぁと思った。

独特の作品世界を味わうためにも
ぜひハードカバーで読んでほしい作品です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: か行の作家
感想投稿日 : 2012年6月11日
読了日 : 2012年6月9日
本棚登録日 : 2012年6月10日

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コメント 4件

takanatsuさんのコメント
2012/06/11

魅力的な作品ですね!
装丁も素敵なんですね、とても読みたくなりました。

「歌でいうならアンサーソングのような作品」
アンサーソングのような作品…すごく興味があります。
『水に眠る』は以前読んだことがあるのですが、記憶があやしいので改めて読み直したいなと思います。

まろんさんのコメント
2012/06/12

takanatsuさん、いつもコメントありがとうございます(*^_^*)

この本、ほんとに言葉も装丁もきれいなんです!
打たれ弱い私にとっては、背筋がざわざわするようなちょっと怖いお話もあるんですが、
それでも手元に置いて置きたい本です。

『水に眠る』の「くらげ」は、淡々と書かれた中になんともいえないもの寂しさがあって
北村さんが、その寂しさを何年も追いかけ続けて
そしてこの『語り女たち』の中の「体」で温かくほどいてくれた気がして
なんだかとてもうれしくなってしまいました。

decoさんのコメント
2012/06/13

北村薫さんは読者がページをめくる姿も想像して物語を紡いでいますよね!
文庫化するとページの切り方が変わる時があるので北村薫さんの本は絶対ハードカバーで読む!

まろんさんのコメント
2012/06/13

desicoさん、コメントありがとうございます♪

「読者がページをめくる姿も想像して物語を紡いでいる」。。。ほんとうにそう思います!
北村さんは、作家である以上に、
「本を読む」ということに信じられないほどの情熱を傾ける方でもありますものね。
ハッとする一文を、ページをめくった直後の
右ページの最初に持って来たりとか、
読みながらうれしくなってしまいます。

私も北村さんの本はハードカバーで揃えたかったので、
図書館で読んで、その後絶版になってしまった本は、探し回りました!

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