【映画化】完全なる首長竜の日 (『このミステリーがすごい! 』大賞シリーズ)

著者 :
  • 宝島社 (2011年1月8日発売)
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本棚登録 : 1455
感想 : 357
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まだ多感な少女だったころ。(少女の前に美という字がつかないのがカナシイけれど)
この世は、実は誰かが見ている夢で
私はその中でチェスの駒みたいに動かされてるだけじゃないの?
ある朝目覚めたら、家族も友達も幻のように消えて
何もないまっしろな空間がぽっかりと拡がっていたらどうしよう。。。
なんて考えて、怖くて眠れなくなってしまうことがありました。
そんな怖さ、寄る辺なさを思い出してしまう本です。

自ら死を選び、植物状態となった弟と
「センシング」というシステムで意思の疎通を図る姉。
コミュニケーションを拒むかのように、夢の中で何度も
ピストルをこめかみに当てて引き金を引く弟。

幼い日、夏を過ごした南の島で、潮溜まりに薄めた青酸カリを垂らし
弱って浮き上がってきた魚を掴まえて遊んだ記憶。
「この場所は危険」の目印に、潮溜まりに突き立てられた棒切れにたなびく赤い旗。
クラクラするような暑さの中で、船底についた錆をひたすら叩くカンカン虫。
砂浜を奇妙な機械で宝探しして見つける、小さな金属製の首長竜。

死や絶望、喪失の匂いを振り撒き続ける小道具たちの鮮やかなこと!
読んでいる間ずっと息苦しくて、まるで白昼夢に迷い込んだよう。

遠い昔、地球上に確かに居たのに、「こんな恐竜がいたはずがない!」と
祖父に破り捨てられた絵の中の首長竜のイメージに重ねて
存在の危うさに震えながら、
「私はここにいるよ!」と必死で手を伸ばしているようなヒロインが哀しい。

読後感の爽やかな作品のほうが好きという方や物語世界に引きずられやすい方は、
エネルギー充填120%!と言えるくらい元気な時に読まれたほうがいいかもしれません。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: あ行の作家
感想投稿日 : 2013年5月16日
読了日 : 2013年5月8日
本棚登録日 : 2013年5月16日

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