6年ぶりにイギリスへ帰ってきたエマリー・ジャスティンは、田舎町で殺人事件に巻き込まれる。家具デザイナーのアーノルド・サインが時計ばかりで装飾された部屋で銃殺されたのだ。それらの時計は正確な時間を示しておらず、全て狂っていた。
エリザベス・フェラーズの代表作とも言える本書は、私のような現代の日本社会でしか生きていない若者には、少々理解し難いものかもしれない。
というのも、フェラーズの心理描写が素晴らしく深く、それらが本書の題名にも現れる「嘘」と絡み合い、西洋人の思考や心境に苦慮しながら頁を捲らなければならないからである。
しかしながら、そんな理解力乏しい私でも、フェラーズの人間心理を熟知した優れた洞察力に感服すると共に、限りなく深い闇を存分に味わうことができた。このような作品を生み出したフェラーズに感謝したい。
最後に、「嘘」は「つく」もの。決して「刻む」ものではない。【The Lying Voices】を【嘘は刻む】と訳す辺り、本書の鍵となる時計の刻む時間を思わせるのは、何とも意味深長であり、ユーモアに富んだものだと感じさせる。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2013年11月18日
- 読了日 : 2013年11月18日
- 本棚登録日 : 2013年11月13日
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